花乱写 -LOVERSFLOWERS-

花乱写

花は歌う「私は美しいと言われるために生まれてきたの」
花は泣く「誰も私のことを見つめてくれないの」
花は喚く「もっと高いところに連れていって欲しいの」
花は嘯く「あなたを愛しいと感じたことなど一度もない」
花は喘ぐ「雌蕊がとろけて花びらがちぎれて壊れちゃうわ」
花は願う「私は枯れても、乾いても、最後の日まで見つめられたいのよ」

真夜中に花とおしゃべりしながら、その姿にこれまで出会った女性たちの姿を重ねシャッターを押していく。都会に暮らす女性は、心の奥深くに抱く感情を上手に隠しながら、社会で強かに生き延びる。

中村豊美は、競争社会での生存戦略が生み出した欲望の存在を明らかにする写真家、画家である。自然界において淘汰されまいとする花々のように、美しさを追い求め、命の最後の瞬間まで愛し愛されることを欲している。闇の中に佇む花を女性にみたて、映画のワンシーンのようなアート作品を創造している。そこでは、光と闇、愛と憎しみ、抑圧と解放、依存と孤独など、全ての双極と矛盾を受け入れる心模様が表現される。